「化粧品衛生監督条例」から「化粧品監督管理条例」へ
2020年6月29日、化粧品の規制について定める「化粧品監督管理条例」〔国令第727号〕(以下「新条例」といいます。)が公布されました。
従来の「化粧品衛生監督条例」(以下「旧条例」といいます。)が1990年1月1日に施行されていますので、実に30年の時を経て見直されたことになります。
ご存知のとおり、この30年の間に、中国の経済は目覚ましく発展し、それに伴い、化粧品産業をめぐる環境も大きく変わりました。(下地が中国にいた2012年頃、街中で化粧をしている中国人女性は稀でした。)
そのような中、実情と条例の規定が合致しなくなってきているという指摘は、かなり以前からあったようです。
それでは、具体的に、この改正では、どのような点が変わるのでしょうか?
主な変更点と新条例のポイントについて、取り上げたいと思います。
化粧品の分類が変わります
旧条例では、「特殊用化粧品」と「非特殊用化粧品」とに分類されていましたが、新条例では、
- 「特別化粧品」:ヘアカラー・パーマ、シミ取り・美白、日焼止め、抜け毛予防を目的とするものや、新しい効能を言明する化粧品
- 「一般化粧品」:「特別化粧品」以外の化粧品
という分類に変わります。
旧条例の分類から名称が変わっただけでなく、該当する品目にも変更がありますので、皆様の取り扱っている品目については、個別に確認するようにしてください。このどちらかに分類されるかによって、必要とされる手続きが変わります。
「特別化粧品」の場合
:製造又は輸入にあたり、国家薬品監督管理局にて登録が必要です。
「一般化粧品」の場合
:国内製造にあたり、省級薬品監督管理機関への事前届出が必要です。
:輸入にあたり、国務院薬品監督管理機関への事前届出が必要です。
各手続きの簡略化
新条例では、特別化粧品の「登録」も、一般化粧品の「届出」も、旧条例下の手続きに比べると簡単になります。特に届出については、ウェブサイト上ですべてが完了するような仕組みが導入されます。
ちなみに、化粧品に限らず、地域ごとにばらつきはありますが、ここ数年で中国当局でのオンライン手続きの導入がかなり進んでおり、当事務所としても、だいぶ仕事がやりやすくなりました。
責任の所在が明確になりました
新条例では、
- 「登録人」
- 「届出人」
という、あたらしい概念を導入し、それぞれ、自ら言明した化粧品の品質や効能について責任を負うことを明確にしました。
登録人・届出人には、登録・届出に先立って、安全評価の実施や、言明する効能を裏付ける文献やデータ等を公表することが要求されます。
なお、相応の化粧品製造許可を取得している他の企業に、化粧品の製造を委託することは可能です。
製造管理に関するルールが強化されました
新条例では、化粧品の登録人・届出人・製造受託者に対して、化粧品の製造にあたり、次のような義務が定められています。
- 「化粧品製造品質管理規範」の要求に従うこと
- 製造品質管理システムを確立すること
- 供給業者の選択、原料の検査、製造過程や品質の統制、設備の管理、製品の検査等、管理全般に関わるルールを確立し運用すること
- 原料及び内容物に直接触れる包装材の入荷検査記録や製品の販売記録に関するルールを確立し運用すること
- 品質安全責任者を指名すること
この他、新条例では、化粧品販売業者に対しても、入荷検査記録ルールを確立して運用すること等の義務を定めています。
販売後の品質安全管理に関するルールが強化されました
新条例では、登録人・届出人に対して、製品の販売後においても、次のような義務を課しています。
- 化粧品の副作用についてチェック機関に報告すること
- 化粧品の品質上の欠陥等によって人体に影響があると認めるときは、生産停止、リコール、販売業者への販売停止通知、消費者への使用停止通知、それらの記録化の措置を直ちに講じること
- 回収した化粧品について、適切に処理し、省級監督管理機関に回収及び処理の状況を報告すること
違法行為に対する罰則が厳格化されました
新条例では、重大な違法行為を行った場合(例えば、無許可製造、無登録での特別化粧品製造・輸入、禁止原料の使用など)には、罰金が課されるほか、情状が重大なケースでは、届出の無効化、ライセンスの剥奪、その後10年間届出やライセンスを認めない等のペナルティが課せられることになっています。
また、法定代表者等の責任者個人に対しても、罰金のみならず、将来にわたり化粧品関連事業に従事することが禁止されるといったペナルティが定められています。
このように、新条例では、罰則を複合的に定めて、違法行為に対する強い抑止効果を狙っています。
おわりに
中国での化粧品産業やIT産業の発展に伴い、関連する法規制も、時代のニーズに合わせたものへと変化していますので、関連事業者のみなさまは、きちんとキャッチアップしていきましょう。
今後は、旧条例から新条例に移行するに伴い、その他の関連法律法規、「化粧品登録管理弁法」や「化粧品生産経営監督管理弁法」などについても改正されることが予定されています。
(参考URL)
■化妆品监督管理条例(国令第727号)_政府信息公开专栏 (www.gov.cn)
Maki Shimoji