※この記事は、2021年1月時点で作成したものです。
新商標法の成立
ミャンマーでは、従来「商標法」というものは存在しておらず、2019年にようやく「商標法」〔2019年連邦議会法第3号〕(以下「新商標法」といいます。)が制定されました。
これまでの商標実務は、登録法に基づき所有者宣言をし(非公開)、不法に自己の商標を使用した者に対しては特定救済法に基づき使用差止めを請求し、商標の偽造に対しては刑法に基づき刑事罰が科せられる、というものでした。
まずこの「所有者宣言」という言葉はあまり聞きなれないかもしれませんが、これは、商標権は使用によって発生するという考え方(使用主義)を採用していたことによります。
新商標法では、商標は登録することによって発生するという考え方(登録主義)を採用し、この点抜本的な変更を伴うものであったために、緩やかに移行する流れとなっています。本記事の執筆時点では、未だ新商標法の施行がなされていません。
使用主義から登録主義への転換
ミャンマーでは、従来、商標権について使用主義がとられていましたが、新商標法によって登録主義へと転換されました。
先ほど説明しましたとおり、登録主義とは、商標を登録することによって権利が発生するという考え方をいい、使用主義とは使用することによって権利が発生するという考え方をいいます。日本では登録主義が採用されていますが、米国などでは使用主義が採用されています。
使用主義と登録主義は、全く異なる考え方ですので、ここを移行させるには工夫する必要があります。
先願主義を採用
登録主義のもとでは、同一又は類似の標章が複数出願された場合に、何を以て優先順位を決定するのか、という問題が発生します。
この点について、ミャンマーの新商標法では、出願の早い方を優先するという考え方(先願主義)がとられています(新商標法19条)。なお、日本でも同じ先願主義が採用されています。
旧法下の権利の移行措置
新商標法では、新商標法施行前から存在した権利の移行措置として、次のように定められています(新商標法93条)。
(a)証書登録所に登録された標章の所有者又は登録されていないものの実際に使用されている標章の所有者が、商標権を有するためには、この法律に基づき登録を申請しなければならない。
(b)登録されているかどうかにかかわらず、ミャンマー市場で実際に使用されている標章は、所定の期間中、当該標章が使用されている商品又は役務について当該標章を使用する優先権を有する。
この点に関して、2020年8月28日、「商標法に基づく登録申請に関する命令」〔2020年商業省令第63号〕(以下「63号命令」といいます。)が発布され、これに基づき、2020年10月1日に優先使用権(新商標法93条(b))の申請受付が始まりました(63号命令2項)。ここで申請できる商品と役務は、従来から登録又は使用していた範囲に限られ、この点追加して申請することはできません(63号命令4項)。
また、「証書登録所に登録された標章の所有者又は登録されていないものの実際に使用されている標章の所有者」(新商標法93条(a))に当てはまらない場合は、新商標法施行後に登録を申請することになります(63号命令8項)。
保護の対象たる標章
新商標法では、保護の対象となる「標章」について、次のとおり定義されています(新商標法2条(j))。
標章とは、特定の商品又はサービスを他の商品又はサービスと区別するために、固有名称、文字数字図形部品(※原文直訳)、色の組合せを含むあらゆる視覚的標識、又はこれらの標識を組合せたものをいう。商標、サービスマーク、団体標章及び認証標章が含まれる。
なお、日本の商標法では、音も標章の一つとされていますが(日本商標法2条1項)、ミャンマーの新商標法において「音」は標章の定義に含まれていません。
もっとも、標章であったとしても、拒絶事由がある場合には、商標登録が認められません(新商標法13条・14条)。
その他
商標の登録期間は10年とされており、その後10年間更新することができます(新商標法34条)。この点、日本と同様です。
また、商標の出願は、ミャンマー語のみならず、英語でも行うことができるとされていますが、翻訳が要求される場合もあると明記されています(新商標法16条)。
当事務所では、ミャンマー語のリーガル翻訳にも対応しておりますので、そのような指摘を受けることがあればお問合せください。
(参考URL)
■trademark_jp.pdf (jica.go.jp)(仮訳)
■28.8.20.pdf (commerce.gov.mm)(原文)
■trademark_63_2020_jp.pdf (jica.go.jp)(仮訳)
Myo Thant Swe / Maki Shimoji