法規制上、外国企業が日本に進出すること自体のハードルは特に高いものではありません。

アジア圏の拠点として位置づけることもできますので、日本への進出をご検討されてみてください。

日本への進出形態の選択肢

日本に進出する形態としては、次の3パターンが考えられます。それぞれについて、基本的な特徴をご紹介します。

日本法人(子会社)の設立

日本法人(子会社)は、独立した法人格を持ちますので、原則として本国法人(外国会社)が債権者に対して直接責任を負うことはありません(有限責任)。代表者の全員が日本非居住者である場合でも、会社設立登記を行うことができますが2015年3月16日民商第29号通知)、日本非居住者の名義で銀行口座を開設することは難しいというのが現状ですので、この場合、資本金を払込む際に工夫が必要となる場合があります。会社の形態としては、「株式会社」のほか、設立や維持のためのコストが低い「合同会社」を選択することもできます。なお、「合同会社」は、英語では「Limited Liability Company(LLC)」と訳されますが、米国のLLCとは異なり、構成員課税(パススルー課税)を選択することはできません。

日本支店(営業所)の設置

日本支店は、独立した法人格を持たず、本国法人(外国会社)の一部という扱いとなり、本国法人(外国会社)が債権者に対して直接責任を負います(無限責任)。

支店には、日本居住者である「日本における代表者」を少なくとも1名置く必要があります。

駐在員事務所の設置

駐在員事務所では、市場調査、情報収集、広告・宣伝、物品の購入・保管等の活動をすることができますが、継続的な取引(営業活動)を行うことはできません。また、本国法人(外国会社)の一部という扱いになりますので、本国法人(外国会社)が債権者に対して直接責任を負います(無限責任)。会社名義の銀行口座を作ることはできず、事務所代表者が個人口座を開設することになります。

    なお、税務上の観点からは、一概にいずれの形態が有利ということはできず、この点についてはケース・バイ・ケースです。専門家と十分に相談するようにしてください。

        会社や支店の名称(商号)に関する基本的ルール

        商号は、ローマ字で登記することもできます(商業登記規則50条1項)。つまり、無理やり日本語の文字(漢字、ひらがな、カタカナ等)に当てはめる必要がなく、自国で使っている耳慣れた音の商号をそのまま用いることが可能です。

        また、他人がすでに登記している商号と同一であり、かつ、営業所(会社の場合は本店)の所在場所を同一とする内容の設立登記は認められていません(商業登記法27条)。

        これは、営業所の所在場所が異なっていれば既存の会社と同じ商号を使用しても構わないということですので、日本では、この点気にする必要はさほど高くはありません。ただし、例えば同じビルの中に同一商号の会社が存在するといった可能性もありますので、予め商号の検索をかけておくことをお勧めします。

        日本法人(子会社)を設立する場合の資本金

        日本では、会社は資本金1円から設立することができます。

        ただし、事業の内容として許認可が必要な場合、経営・管理ビザの取得が必要な場合、金融機関から融資を受ける必要がある場合など、個別の事情に応じて相応の資本金の額が求められることがありますので、この点については事前に確認しておく必要があります。

        事業の内容と許認可

        行おうとする事業の内容によっては、行政機関の許認可が必要な場合がありますので、この点は事前に確認すべき重要なポイントとなります。許認可は、次の5種類に区分されます。

        • 届出:行政機関に届け出るのみで営業することができます。
        • 登録:行政機関に届け出た上で名簿に登載されることで営業することができます。
        • 認可:行政機関に申請し要件を満たすことで営業することができます。
        • 許可:行政機関に申請し審査に合格することで営業することができます。
        • 免許:特定の資格持つ者が行政機関に申請し、定められた要件を満たすことで営業することができます。

        (参考URL

        内国株式会社の代表取締役の全員が日本に住所を有しない場合の登記の申請の取扱いについて(通知)(2015年3月16日民商第29号通知)(日本語)

        Maki Shimoji