投書による労働相談
ベトナムの現地メディアで、次のような法律相談がありました。
会社では緊急の注文があるとして、上司が従業員に対して10時間連続して働くように強いています。勤務時間は午前7時から午後5時まで休憩なし、昼は交代で15分ほど昼食をとります。従業員を長時間働かせることは労働法に違反しないのですか?
この法律相談を行っているのは、現地企業に雇用されている労働者です。
労働法違反があった場合には刑事罰の対象となることもあります(ベトナム労働法239条)。
相談に対する現地弁護士のアドバイス
上の相談に対して、ベトナムの弁護士は次のように回答しています。
労働法第104条では、通常の労働時間は、1日8時間、1週間48時間を超えてはならないと規定されています。もっとも、労働者は、通常の労働時間に加えて、時間外労働を行わなければならない場合があります。
時間外労働とは、法律や労働協約、労働規則で定められた通常の労働時間外の労働と解されています。
時間外労働は、1日の通常労働時間の50%を超えないようにしなければなりません。
また、週単位の就業規則を適用する場合には、通常の労働時間と残業時間の合計が1日12時間を超えてはならなりません。
さらに、残業時間は、1ヶ月に30時間を超えてはならず、また、原則として1年に200時間を超えてはなりません(国が定める特別な場合には、1年に200時間を超えて残業させることができますが、それでも300時間を超えてはならないことになっています。)
何日も連続して残業をした後は、その分の補償として、上司が休暇を取るように手配しなければなりません。このように、1日8時間以上働いても労働時間に関する法律に則っていることになります。
時間外労働をした場合、労働法第97条の残業代は、平日の残業は給与の150%以上、週休日の勤務は200%以上、祝日や有給休暇日の勤務は日給を享受している従業員の給与を除いた300%以上の給与が支給されます。
休憩時間が15分しかなければ、休憩時間に関する規定に違反しています。第104条、第108条に規定されているように、8時間連続して勤務する従業員には、労働時間の中から30分以上の休憩時間が与えられます。
現地弁護士による回答のポイントは以下のとおりです。
- 1日8時間を超える労働自体は違法ではない。
- 平日の時間外労働の対価は150%以上、週次休業日は200%以上、祝日及び有給休暇は300%以上である。
- 超過した労働時間分は代休に充てる必要がある。
- 連続8時間以上の勤務では、その8時間の中で30分以上の休憩が必要である。
ベトナム労働法106条1項では、「時間外労働」を「法律・集団労働協約または就業規則で規定された通常の勤務時間以外の時間に就労すること」と定義しています。そして、同条2項でそれを可能とする条件が3つ定められています。
具体的には、次のとおりです。
- 労働者の同意を得ること。
- 労働者の時間外労働の時間数は、1 日の通常勤務時間の 50%を超えてはならず、週当たり勤務時間の規定を適用している場合は、通常の勤務時間と時間外労働の総時間数が 1 日 12 時間を超えてはならず、1 カ月で 30 時間、1 年で 200 時間を超えてもならない。ただし、政府が規定する特別な場合は、1 年で300時間を超えない時間外労働が認められる。
- 1カ月間に時間外労働の日が多く続いた場合、雇用者は被雇用者が休めなかった期間の代休を取得できるよう人員を配置しなければならない。
これらをすべて満たさない限り時間外労働をさせることはできませんので、上の現地弁護士の回答は、無理矢理でも同意自体は取得している前提ということになります。
<Shota Hiratsuka / Maki Shimoji>